口和自治振興区 配食サービス部
#口和が好き 003 2023年5月20日
ここは、向泉にある口和コミュニティーセンターの調理室。そこでとあるミーティングが行われています。
「来月はワラビやフキはある?」
「あると思うよ」
「うちはニラとホウレン草があるよ」
「そしたら、玉子とじしようか」
どうやら、みなさんのご自宅の畑や山で採れる野菜や山菜の名が次々と挙がっているようですが……。
どうも、地域マネージャーの松本です。
このお腹がすいてくるような会話は、配食サービスのお弁当のメニューを決めるミーティングでのものでした。
という訳で、今回は口和自治振興区が行っている「配食サービス事業」について、配食サービス部のみなさんにお話を伺ってきました。
配食サービス事業は、2010年(平成22年)に「なにか他ではやっていないような取り組みを」ということで、「高齢者の見守り」と「災害時の炊き出しに対応できる調理スタッフの育成」を目的とし、口和自治振興区・女性部の事業として計画され、翌2011年度より実施され今年度で13年目を迎えました。
当初は、口和地域の各自治会女性部のみなさんが調理を担当されていましたが、それもなかなか大変ということで、2013年度より新たに「配食サービス部」が設立され今日に至ります。これまでお届けしたきたお弁当は延べ4000食を超え、他にも試食会、アンケート、そして先進地視察などを行ってこられました。
現在は、「調理」を配食サービス部が担当され、「ご利用者とりまとめ」と「配達」を各自治会で担当されています。配食サービス部は公募となっていて、部員さんからのお声掛けなどによって集まったみなさんで、現在は8名の方が調理を担当してくださっています。
配食サービスをご利用いただけるのは、「口和町にお住まいの、ご家庭で調理が難しい65歳以上の単身及び2人世帯、または70歳以上の世帯」となっていますが、状況によってこれ以外の場合も柔軟に対応しています。配食サービスの実施日は基本的に月2回で料金は1食500円となっていて、ご利用者さんは月1回(第4水曜日)と2回の(第2、第4水曜日)のどちらかを選べます。利用者数は、ここ近年は1回25人前後となっています。 配達担当のみなさんには、お弁当を直接手渡ししてご利用者さんへのお声掛けをしてただいています。また、口和支所、社会福祉協議会と連携して、見守りが必要な高齢者の方についての情報共有ができているのも、この事業の成果のひとつになっています。
気になるお弁当の中身ですが、まずは取材させて頂いた2回のお品書きをご覧ください。
2023年4月12日のお品書き
- 炊き込みご飯…竹の子、ごぼう、人参ほか
- 焼き魚…鮭
- 酢の物…ぜんまい、わらび、パプリカ
- きんひら…ヤーコン、人参
- ごま和え…ほうれん草
- 天ぷら…こごみ、かぼちゃ、豚肉、たまねぎ
- デザート…バナナ
2023年4月26日のお品書き
- 桜エビごはん…桜エビ、枝豆
- ムニエル…鱈
- 酢の物…きゅうり、だいこん、かにかま
- 煮物…竹の子
- 焼き物…アスパラのベーコン巻
- ごま和え…こごみ
- 天ぷら…タラの芽、こしあぶら、こごみ、つくし、竹の子
- デザート…オレンジ
普段にはない特別感を味わっていただけるように、おかずは少なくとも主菜1品に副菜5品。ごはんも味付きごはん。そして色合いもあざやかになるように気を配られています。
食材は、冒頭にもあるように、部員のみなさんが持ち寄られた地元産、自宅産の食材が中心で、足りないものだけ購入しています。
市販のお弁当には出来合いのものが入っていることが多いですが、配食弁当は全てこちらで調理されたものばかりです。
食材の調達から調理まで作り手の顔が見えるお弁当は市販のものではなかなかありません。食材はその季節ごとのもので、採れたて新鮮。いまの時期は、山菜がふんだんに使われて、この内容を街の料理屋さんでいただこうと思ったら幾らかかるかわかりません。これは、毎回ご利用者さんが楽しみにされているのもわかります。
今回特別にぼくもお弁当を頂いたのですが、食べてみるとやっぱり全然違うのです。作り手のみなさんのお気持ちがちゃんと伝わってきます。また、市販のものに比べて味付けがやさしいのにしっかり美味しいのは素材と調理されるみなさんの腕の良さのおかげでしょう。本当にそれぞれの素材が染み入るようで、体がよろこぶ幸せなお弁当でした。さまざまなものが値上がりしている昨今、改めてこれだけの内容でこの値段はありがたい限りです。
なお、お弁当はご自宅で召し上がることを想定しているので、お箸やお醤油などの調味料はついていません。また、アレルギーや糖尿病などの特別食には対応していませんのでご注意ください。
召し上がるみなさんのことを想ってメニューを相談し、山菜をとりに山に入り、ご自宅の畑で様々なお野菜を育て、丁寧に下ごしらえをされ、朝早くから一品ずつ丁寧に調理され、そして楽しみに待っておられるおひとりずつに顔を見て手渡されるお弁当。これを商売でやろうとすれば、値段もおのずと高くなってしまうでしょう。しかし、この仕組みを10年以上に渡って続けられてきたのは、「調理」「配達」「ご利用者のとりまとめ」それぞれに、ご自分の時間と知恵と想いを地域のために使ってこられたみなさんがいらっしゃったからこそです。 取材するなかで、「口和は野菜の種類が豊富」というお話があったのですが、これだけのことをやっている「口和は人材の種類も豊富」と感じつつ、また食べたいなぁと思うのでした。
口和自治振興区
地域マネージャー
松本 晋太