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#口和が好き

#口和が好き 005 口和郷土資料館

口和郷土資料館 安部博良さん、才田孝さん、安部ミヨコさん

#口和が好き 005 2023年7月20日


1台の蓄音機からはじまりました

こんにちは!電気を使っていない蓄音機から出る音の迫力に驚かされた地域マネージャーの松本です。

今回は、そんな体験ができる口和郷土資料館におじゃまして、館長の安部博良(以下「安部さん」)さん、副館長の才田孝さん、安部ミヨコさんにお話を伺ってきました。

口和郷土資料館は、1973年(昭和48年)に当時の「広報くちわ」で生活用具や農具の提供を呼び掛けたことをきっかけに、地域の暮らしを後世に語り継ぐ施設として1977年(昭和52年)に旧口和町が旧口南中学校2階に開設しました。その後、庄原格致高校口和分校の閉校を受けて、口和郷土資料館はその旧校舎に移転します。また、1982年(昭和57年)から2004年(平成16年)の間は、口和農村研修センターが併設され、中高生を中心に各地からの合宿を受け入れていました。

安部さんが口和郷土資料館の「管理人」となられたのが2003年(平成15年)のことでした。当初は口和郷土資料館と農村研修センターの「管理人」としてのお仕事でした。 そこに転機が訪れるのにそう時間は掛かりませんでした。安部さんは、収蔵庫になっていた旧体育館のなかの未整理品の山のなかで1台の蓄音機と出会います。それは、いまから100年以上前の大正時代に作られたもので、安部さんはこれを修理して再び音を奏でるようにしてコンサートを開催しました。

安部さんが最初に修理された蓄音機

これをきっかけに、安部さんは収蔵品のなかの映写機や電話機などを次々と修理してよみがえらせていきました。「古い機械を修復して展示している資料館」として新聞やテレビ、ラジオにも取り上げられ、各地から古い機械が集まってくるようになりました。

先人たちの知恵と技術がつまった音響・映像機器たちをひとつずつよみがえらせ、口和郷土資料館は昔の音響・映像機器を動く状態で展示する「動態展示」の資料館として知られるようになっていきます。

そもそも安部さんが機械の修理ができるのは、大手電機メーカーで長年テレビやビデオといった音響、映像機器のメンテナンスのお仕事を国内外でされていたからです。 最初は全くそのつもりは無かった安部さんですが、その「スキル」と「未整理収蔵品の山」が出会ったことで、多くの音響・映像機器が命を吹き返すことになりますが、そのスタートがこの1台の蓄音機だったのです。

口和郷土資料館には、現在未整理品も含めて音響・映像機器が約1,500点あります。それには展示される以外にもうひとつ重要な役割があります。それは、「動態展示」を維持するための部品のストックという役割です。展示品は古いものばかりですので、メーカーにはもう部品はありません。そこで、これらの収蔵品の部品を利用することで、動く状態を維持することが可能になっているのです。

動く状態のものが多い音響映像機器

展示品も心遣いも本物です

このような経緯で、口和郷土資料館は「音響・映像機器の動態展示」をしている全国的にも珍しい資料館となったわけですが、もともと収蔵されていた生活用具や農具などの「民具」もとても充実しています。近隣の資料館と比べても収蔵品の数と種類が多く、そして保存状態が良好なのが特徴です。

これらの「民具」は呼びかけに応えて口和町内から寄贈してくださったものですので、模造品(レプリカ)ではなくこの口和町内で実際に使われていた「本物」です。

収蔵品は、生活用具や農具の他、以前「口和探訪」で歩いた宮内市場にあった「旅館の看板」や、実際に使われていたお家から移設した「囲炉裏の間」など約4,000点あります。

また、口和郷土資料館の建物自体も、庄原市内でも少なくなってきた貴重な木造建築の校舎で、展示品のひとつと言っていいものです。

口和町内を中心に集められた本物の民具たち

そして、口和郷土資料館のもうひとつの特徴が、お客さんへの心遣いです。一般的に、博物館や資料館ではお客さんは自分たちだけで館内をまわることが多いと思います。ところが、口和郷土資料館では基本的に職員が一緒にまわり、説明をしながらご覧頂いています。このおかげで、説明文だけでない多くの情報を知ることができますし、動態展示の良さを最大限味わうことができます。

また、安部ミヨコさんは、お客さんに気持ちよくお帰りいただきたいという想いから、館内を清掃し各所に野の草花をさりげなく飾られています。きれいな展示品や館内が当たり前のように思っていましたが、そうではないのです。

お客さんにはリピーターがたくさんいらっしゃるそうですが、展示品の内容に加えてこの心遣いに魅かれる方も多いのではないでしょうか。

お花がさりげなく飾られています

収蔵品の整理はつらいよ

2019年、口和郷土資料館の今後にとって重要な出会いがありました。

才田さんは、大手電機メーカーを退職され君田のご実家にUターンして来られました。もともと機械好きの才田さんが口和郷土資料館に足を運ぶのは当然のことでしたが、その展示内容に感激され、趣味の無線機器や真空管アンプを持ち込み、安部さんのアドバイスをもらうようになります。資料館の今後を考えていた安部さんが、この打ってつけの人材を見逃すはずはありません。才田さんはほどなくスカウトされ、翌2020年度より知識と経験を生かして活躍されることになります。

ところで、一般的に博物館や資料館では、展示品以外に収蔵品が多くあります。これらが眠っているのは、展示するために調査、分類といった地味で地道な作業が必要で、なかなか追いつかないからです。口和郷土資料館にも、開館以来集まってきた収蔵品に未整理のものが沢山あります。

話は変わりますが、人には向き不向きがあり、向いていることに集中できることが理想です。

安部さんは、大手電気メーカーにお勤めの間、技術屋一筋に国内外の現場で活躍されていました。

才田さんも、同じく大手電機メーカーのアフターサービスの部門にいらっしゃいましたが、その多くでアフターサービスの「仕組みづくり」とその「管理」を担ってこられました。

もうお気づきの方もいらっしゃると思いますが、実はこのお二人は口和郷土資料館の状況にとって理想的な組み合わせなのです。

「動態展示」や「ハンズオン(見て触れる)展示」が魅力の口和郷土資料館にとって、修理の職人安部さんの存在は欠かせません。一方、過去の未整理品に加えて、その後も様々なものが寄贈されていきます。 そこで、才田さんの登場です。アフターサービスの「管理」を担ってこられた才田さんが加わることで、これまで手つかずの収蔵品の整理やデータベース化などの「管理」に取り組むことができるのです。

ただし、収蔵品数(表参照)が膨大なのと、収蔵品についての「いつ、どこで、だれが」といった情報(二次資料)が欠けているものが多く、これを調べながらになりますのでかなりの時間が必要ですが、口和郷土資料館の収蔵品を次世代に受け継ぐためには欠かせない重要な仕事です。

口和郷土資料館 収蔵品数

民具・農具等約4,000点
映像・音響機器約1,500点
音響メディア(レコード等)約21,400点
映像メディア(映画など)約4,100点
映画ポスター約2,000点

収蔵品の整理には、地元ボランティアの方も協力してくださっています。なかでも、「化石」や「音響メディア(主にレコード)」は、ボランティアの方のおかげでかなり整理がすすんでおり、さらには「民具」の整理についても地元の方のご協力を得て整理を進める計画が動きはじめています。

また、ボランティアと言えば、口和郷土資料館には後援会があり、草刈りなどの環境整備活動のほか、毎月一回「カナリアの会」として歌声ひろばなどの活動をされています。

口和郷土資料館のこれから

取材させていただいた日はお客さんが途切れることはほとんどなく、お忙しいなか代わるがわるお話を聞かせて頂きました。

今回お話を伺って、口和郷土資料館の展示品は「動く」という意味も含めて希少であり、これはやがて「民具」の「ハンズオン展示」の充実を含めて、見て触って感じられる資料館として、この先さらに魅力的な施設になることを期待せずにはいられませんでした。

お忙しいなか、貴重なお話をありがとうございました。

《庄原市口和郷土資料館》
所在地 庄原市口和町永田9番地
開館日 月曜・木曜・土曜(年末年始休館)
開館時間 9:00~17:00
入館料 無料
電話 0824-87-2230(開館時)
メール kuchiwa-shiryoukan@u-broad.jp

または、庄原市教育委員会口和教育室まで。
電話 0824-87-2111
FAX 0824-87-2057
メール soumu-kuc@city.shobara.lg.jp

口和自治振興区
地域マネージャー
松本 晋太

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