社会福祉法人 八国見 就労継続支援B型事業所
ふれあい共同作業所くちわ 山脇圭介さん 藤田里奈さん
#口和が好き 007 2023年10月20日
みなさん、美味しく呑んだビールのアルミ缶はどうしていますか。
そうです、「洗って作業所」ですね。
という訳で今回、口和では「ふれあい作業所」または「作業所」としておなじみ、正式名称「社会福祉法人八国見 就労継続支援B型事業所 ふれあい共同作業所くちわ(以下、「ふれあい作業所」とします。)」におじゃまして、スタッフの山脇圭介さんと藤田里奈さんにお話を伺ってきました。
ふれあい作業所は、1993年に開所し、2004年に法人化、2011年に障害者福祉サービス事業所就労継続支援B型になり現在に至ります。 まず、気になるのはこの長い名称。なかでも「就労継続支援B型事業所」という聞きなれない単語が特に気になります。ということで調べました。
この施設は障害者総合支援法に基づいて設置されます。そのなかで「就労継続支援」は「一般の企業や団体などでの就労が困難な方に就労の機会を提供し、それを通じて知識や能力の向上に必要な機会を供与すること(障害者総合支援法 第5条を要約)」とされ、就労継続支援事業所はこのための施設になります。
A型とB型の違いは雇用契約の有無です。雇用契約を結び一定の時間に決まった仕事をするというある程度のしばりがあり、その対価として賃金が保障されるのがA型です。一方、これが難しい方が利用者として通うのがB型で、おこなった仕事の分だけ対価として工賃を受け取るというゆるやかなものです。ふれあい作業所はこのB型にあたります。
その昔、障がい者の方は学校を卒業すると家に居るしかないようなこともよくあったそうですが、このような仕組みが出来ていくことによって、働く場を持ち、できることが増え、必要とされることで、社会との関わりができ、そこに居場所を得ることができるようになったそうです。 現在、ふれあい作業所は20名の利用者さんの「居場所」として、日々の作業を通じて様々な価値を生み出しています。そして、そこから得た利益が、利用者さんへ支払われる工賃となります。ちなみに、利用者さんの年齢層は20代から70代までと幅広く、なかでも40代前後の方が多いそうです。
ふれあい作業所では主に、施設外就労、業務委託、木工製品製造販売、リサイクル事業を行っていて、利用者さんがこれらを分担して作業を行っています。
施設外就労は、ふれあい作業所内ではなく民間企業などで業務を行うもので、一般的なお仕事に最も近いものになります。なので、これまでにも施設外就労を通じてその会社に就職した利用者さんもいらっしゃるそうです。
業務委託は、清掃や花壇の管理、草刈りなどで、口和自治振興センターの清掃や花壇の管理もしてもらっています。花壇の管理では、ふれあい作業所で苗から育てています。この日もポットからパンジーがたくさんの小さな芽を出していました。 これら施設外就労や業務委託に興味のある企業さんや団体さんがいらっしゃいましたら、ぜひご相談してみてください。
木工製品製造販売は、ふれあい作業所を代表する事業のひとつで、主に木のおもちゃを「道の駅たかの」等で販売されているのをご存知の方も多いと思います。その他に、ハンドメイド木工製品のネット通販をされている「人と木(ひととき)」(運営:株式会社ウィニーズホールディングス)さんというサイトで販売されている絵本棚を一部製作しています。実はこちらの売上の方が大きいそうです。
この本棚がとても好評で、感謝のお手紙が届くこともあります。決して安くはない本物の木の本棚ですから、購入される方も誰かへのプレゼントなどそれなりの想いがあってのことだと思います。それに応えられる製品を作れるはとても凄いことで、しかもお手紙までもらっちゃうなんて。この本棚は、過去に大工をされていた利用者さんが担当されていて、さすが職人さんならではの丁寧なお仕事です。
また、地域の個人や会社さんから、木工製品のオーダーを受けることもあり、実は我が家も木でできたコンポストを作って頂きました。既製品で売っていないものや、ちょっと良いものが欲しいと思ったら、一度ご相談してみるのもいいかもしれません。
これまでに、犬小屋やテーブル、本棚などの家具類、キッチンカーのミニカー、ママゴト用キッチン、フォトフレームなどなどさまざまなオーダーがあったそうで、まさに贈り物にぴったりです。
そして最後は、「アルミ缶は洗って作業所へ」でおなじみリサイクル事業です。ここでのリサイクルは、「アルミ」を集めてリサイクル業者さんに買取りをしてもらうというもので、買取価格はそのときの時価になりますが、最近は買取価格が高いそうです。集められたアルミ缶は、利用者さんが洗ってつぶし、ある程度まとまったらリサイクル業者さんへ持ち込みます。アルミ缶は作業所へ直接持ち込んでいただくものの他に、庄原や三次の企業や施設のみなさんが協力して集めてくれて、それらを定期的に回収しているそうです。ある程度まとまった数であれば個別回収にも対応してくださるそうなので、アルミ缶がたくさんある場合は是非ご相談ください。また、ここで集めているのは「アルミ缶」だけではなく「アルミ」なので、アルミサッシやアルミホイール(タイヤは外してください)などの処分するアルミ製品も大歓迎だそうです。
これら全ての作業から生み出される利益が利用者さんの工賃になるので、作業が多ければ多いほど利用者さんに入る工賃も増えます。これらの事業に対して、地元の企業、団体そして個人のみなさんからたくさんの支援、つまり作業やアルミ缶回収の依頼をしていただくことでふれあい作業所を支えて頂いて本当に感謝していますと、山脇さんと藤田さんは口を揃えておっしゃいます。
おふたりからは日常的に利用者さんと関わるからこその難しさや嬉しさも伺いました。障がい者の方は簡単そうな作業でも難しく長い時間が必要なことも多く、スタッフのみなさんにはまず根気が必要です。利用者さんに対して良かれと思った声掛けでも押し付けになってしまったり、利用者さんの気持ちを汲み取るのが難しかったりということもあります。そんななかで、気が付けばできることが増えていたり、目標を持って取り組むようになったりと、嬉しいこともたくさんあるそうです。このような変化にも時間が掛かりますが、着実に成長していて、思いがけないときにその姿が見られるのがとても嬉しいそうです。
思い返してみると、私は、中学生のときに障がいを持った同級生が何人かいて日常的な関わりがありましたが、それ以降は障がい者の方との関わりはほぼありませんでしたし、この同級生がその後どんな道に進んだのかもわかりません。また、ふれあい作業所のような施設があることは知っていましたが詳しく知ろうとしない、つまり無関心でした。しかし、現実には様々な障がいを持つ方がいて、自分や身近な人が障がいを持つ可能性もあります。実は無関心ではいられないことなのですが、この当たり前のことに改めて気づかされました。
では、障がい者の方にとってなにがいいのか。お話くださったように、良かれと思ってもうまくはいかないこともあります。これ実は、障がい者か健常者かは関係なく、どこにでもある課題でもあります。そこで、どれだけその人の気持ちに寄り添い、根気よく待ち、最後まで付き添うことができるか。
今回お話を伺っていて、山脇さんと藤田さんのおふたりから、そのことの大切さを教えて頂きました。
お忙しいところ、貴重なお時間をいただきありがとうございました。
口和自治振興区
地域マネージャー
松本 晋太