口和の魅力を深堀取材!
#口和が好き

#口和が好き 016 日本料理 一柿

口和町永田

三河功治さん 三河真由さん

#口和が好き016 2024年9月20日


家と食がつなぐ地域の輪

2023年、口和町永田に一軒の料理屋さんがオープンしました。完全予約制でメニューはおまかせのコースのみ。料金もそれなりにそれなりで、決してお安くはありません。しかし、そこで出会った料理たちは、店主が語る食材にまつわるストーリーと併せて、想像をはるかに超えており、「ここでこんなに凄い料理に出会えるとは」という驚きとともに、「料理ってこういうものなんだよな」と静かに興奮しながら改めて心に刻むのでした。

という訳で、今回は、昨年口和町永田に開店した料理屋さん「一柿」の店主である三河功治さんにお話を伺ってきました。

三河さんは、庄原の永末に生まれ育ちましたが、お母さんの実家である口和の一柿家には、幼い頃からよく遊びに来ていました。 お母さんは二人姉妹で、どちらも嫁いで家を出ていたので、三河さんのおじいさんである一柿俊明さんにとって、この家の跡継ぎがいないことは気掛かりなことでした。そのため、口和に遊びに行った三河少年は、夜になるとほろ酔いのおじいさんからこの家の跡継ぎの話をよく聞かされていたそうです。

おじいさんの想い、そして「一柿の家」や口和に抱いていた親しみは、三河さんの頭から離れることなく、やがて「ここでなにかできないか」という想いが芽生えるのですが、具体的なカタチになるのは、もう少し先のことになります。

高校は東城に進み寮生活でした。若い頃は多くの人がこの先自分がどう生きていくべきか思い悩み、自分の様々な可能性を試す時期です。三河さんも最初から料理一筋という訳ではなく、いろいろな事への興味関心に溢れていました。 なかでも高校時代の三河さんは幼馴染とふたりで、当時開催されていた高校生の漫才大会「M-1甲子園」に出場し、広島県代表としてあの「NGK」こと「なんばグランド花月」の舞台に立ったことがあるのです。その後、コンビは解散しましたが、もしかしたらそっちの道に進んでいたかもしれません。三河さんの愛嬌のある人柄と饒舌なおしゃべりを聴いていると、NGKの舞台に立つ姿が容易に想像できて、深く納得してしまいました。

とは言え、もちろん料理にも興味はありました。そのきっかけになったのが漫画の『美味しんぼ』でした。特に、その第17巻にはワニ料理の回で竹地谷の「まんさく茶屋」さんが登場しているのを読んで、馴染みある口和が出ていることに三河少年激しく興奮しました。

「料理」と「口和」、そして「一柿の家」が少しずつつながりはじめ、高校卒業後に大阪の料理専門学校に進み、2年間学んだのち東京の和食店で働きはじめます。

東京に出てから6年経った頃、縁あってあるお店と出会います。それが、滋賀県にある「徳山鮓(とくやまずし)」です。

現在、最も予約の取りにくいお店のひとつとして知られる「徳山鮓」は、琵琶湖の北にある余呉湖(よごこ)のほとりの料理屋さんです。店主自ら余呉湖で釣った鮒を使った「熟鮓(なれずし)」が有名で、その他にもジビエや地元野菜など、地元で採れた食材にこだわった料理が大変人気のお店です。

余呉湖の辺りは、関西のなかでもはずれのほうに位置するいわゆる田舎です。何も無いと言われがちですが、そこには美しい風景と美味しい食材があり、都会にはない豊かな時間が流れています。そんな場所にある「徳山鮓」に、そこでしか味わえない料理を求めて日本全国はもとより海外からもお客さんが足を運びます。 三河さんも、庄原でお店を出すのであれば、全国から食材を揃えるのではなく、地元の食材にこだわった料理をしたいと考えていました。庄原や口和と同じように、何も無いと言われる地域にありながら、むしろ地域ならではの魅力に満ちた「徳山鮓」の世界に魅かれた三河さんは、迷わずその世界に飛び込みました。

今回の取材のなかで「一柿」のホームページのなかに「理(ことわり)を料(はか)る」という言葉を見つけました。「料理」という熟語を読み下したものだとはわかりましたが、意味がわからず、素人ながら調べてみました。

解釈は様々あるようですが、「物事をちゃんと理由をもって行う」ということのようです。つまり「この食材はこういう素性のものなので、こういう調理方法がふさわしい」というが理由あって料理せんといけんよ、ということのようなのです。 食材は、何人もの人が関わることで料理になります。料理人はその最後の部分を担う存在で、それゆえに調理場にやって来るまでの過程をわかっていることで、その食材にふさわしい料理ができるのです。この食材は、どこで採れたのか、誰がどう関わってきたのかを知ることの大切さを考えると、改めてその食材が地元産であることの大切さが見えてきます。

「徳山鮓」での「理(ことわり)を料(はか)る」日々のなかで、調理場のなかだけではない、その食材を育む土地の気候風土とそこにたずさわる人の大切さを学び、料理人三河功治の基礎が形作られました。

「徳山鮓」に住み込みで6年間学んだのち2019年に庄原に戻り、その年の暮れに口和に移住します。 そのとき、おじいさんの一柿俊明さんは介護施設に入られていましたが、「一柿の家に住む」と伝えることはできました。残念ながら、その翌年に俊明さんは亡くなられますが、せめてお孫さんが家を継いでくれると聞いて、安心されていたことを願うばかりです。

ところで2019年と言えば、ご存知の通り翌年から新型コロナの流行が始まります。これによって大きな影響を受けた業種のひとつが飲食業で、ここで新規開業するにはとても難しい状況になっていきました。

しかし、その時期に庄原市内でふたつの事業が動き出していました。ひとつが「庄原市有害鳥獣処理施設」通称「庄原ジビエ工房」。もうひとつが「せとうち古民家ステイズ」です。

ご存知のように、庄原市内もイノシシなどによる農作物への被害が多発しており、この対策として駆除が行われています。「庄原ジビエ工房」は、駆除して終わりではなく、食肉などとして活用するための処理加工施設です。

地元食材へのこだわりという意味で、三河さんにとってジビエも重要な要素のひとつでしたが、このジビエを通じてのご縁もあり、庄原ジビエ工房でスタッフをするようになりました。現在でも非常勤職員をしています。

ジビエ工房には駆除されたイノシシなどが運ばれて来ますが、有害鳥獣による被害とは地元食材への被害ということでもあります。三河さんもこの「駆除」の部分でなにかできることはないかと考えるなかで、狩猟の資格を取ることができて、地域の捕獲班の一員としても活動できるようになりました。

今回初めて知ったのですが、「狩猟」と「駆除」は似て非なるもで、「狩猟」は決められた期間(広島県は11月から3月)のなかで自らすすんで行うものですが、「駆除」は鳥獣被害を減らすために依頼や必要に応じて行うもので狩猟の期間外でも活動することがあります。 「せとうち古民家ステイズ」は、古民家を全面的に改装して、一棟まるごと貸し出す宿泊施設で、庄原市内には3軒あります。

建物と設備の貸し出しのみなので、ホテルや旅館のようにスタッフがいるのではなく、基本的には泊まる方が自分で食事を用意するのですが、出張で料理を頼むこともできるのです。三河さんは、庄原に帰ってきたタイミングでこの出張料理人に就任。コロナ禍で人と人との接触が避けられるなか、家族や仲間内だけで泊まれるスタイルや古民家を大胆に改装した建物が注目されて人気になり、出張料理の依頼も順調に入ってきました。

コロナ禍の影響でお店の開業は少し先延ばしになりましたが、そのかわりに「庄原ジビエ工房」と「せとうち古民家ステイズ」に関わることで、地元での料理につながる仕事を得るとともに、人とのつながりも増え開業に向けての助走期間となりました。

そして、迎えた2023年。いよいよ自分のお店を開業します。店名はこの家の姓を継いで「一柿」としました。自分の好きな料理を通して、こころのなかにずっとあった「一柿の家」に再び明かりが灯りました。 三河さんの根っこには、いつも「一柿の家」があり「ここでなにかできないか」という想いがありましたが、ここにようやくひとつのカタチに実を結びました。

ここにお店を開くにあたって欠かせなかったのが、口和、そして「一柿の家」がある深屋地区のみなさんが快く受け入れてくれたことです。

そこに暮らす、そこにお店を出すというのは、人生においてかなり大きな決断です。そこでやっていこうと決めるには地元に受け入れてもらい、その一員になれるかどうかは大変重要な要素です。三河さんはここで新たな一歩を踏み出せたのは、地域のみなさんのお陰だと本当に感謝しています。

おじいさんとそのご家族が綺麗な状態で残してくれた「一柿の家」。そのお陰で「料理」を通じてこの家を次の時代まで生かす道ができました。

そして、この「料理」は、駆除された有害鳥獣を食材にする、さらに駆除を通して産物を守り、それがまた「料理」につながるという、輪ができました。 もちろん、地元のみなさん、有害鳥獣駆除班のみなさん、ジビエ工房とそれに関わるみなさん、古民家ステイズのお客さん、などなど人の輪も広がっています。

今年5月。「一柿の家」には新たなご家族が加わりました。真由さんとのご結婚です。

真由さんは、三次市の出身で、三河さんとはジビエ工房で一緒に働く仲間でもあります。

真由さんは、庄原実業高校に通っていたころ、身近で起きている鳥獣被害の問題に関心を持つようになり、そこから狩猟にも興味を持ち、卒業後には狩猟免許も取得しました。

そんな経歴の持ち主なので、これはもううってつけの人材としてジビエ工房に誘われたのでした。

一方、真由さんはフォトグラファー(写真家)としても活躍していて、『めくりて』というフリーペーパーの製作に関わったり、自分の姿をきちんと残すための個人の記念写真撮影会を開催したりしています。

新たな家族も増えて、「一柿の家」は一層にぎやかになりました。おじいさんの想いはちゃんと三河少年の心に刻まれ、受け継がれていきます。これから先も、「一柿の家」を中心に、「食」を通じてこれからも三河さんの周りにはたくさんの輪が広がっていくことでしょう。 今夜も、わが家から見上げる「一柿」の客室には明かりが灯っています。

口和自治振興区
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松本 晋太

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