口和の魅力を深堀取材!
#口和が好き

#Pre01 #口和が好き たなべ牧場

~Uターンしたら牛の目が穏やかになり地域が元気になる未来が見えてきた~

口和町常定

田邊賢太さん、田邊 梢さん

#口和が好き 01 2023年1月20日

雪の残ったの砂利道先には造成された平らな土地。 削り取られてむき出しの土から造成の苦労が伝わってくるようです。 なんと4年前から自分たちで削り始めたそうです。 登りきったところで振り返ると、 深紅の壁が印象的な真新しい牛舎が見えました。

 今回は、その新しい牛舎とともに新たな一歩を踏み出した、たなべ牧場の田邊賢太くん、梢ちゃんを訪ねてお話を伺い、そこから地域の未来が見えてきたお話です。
 
たなべ牧場は、賢太くんのお爺さんが1956年に創業されて今年で68年目。2020年には「合同会社たなべ牧場」として法人化されています。現在は、ホルスタイン60頭を飼育し、生乳の出荷と「モーモーあいすらんど」としてアイスクリーム、プリンの製造販売を手掛けてられています。
 
幼いころからご両親の働く姿を見て牧場仕事の厳しさを知る賢太くんは、跡を継ぐことに前向きになれずにいましたが、最近の酪農は自動化が進んでいることを聞き、「これならやれるかも」と思うようになりました。

それからは、持ち前の探求心と行動力で全国の牧場を周って研究を重ねます。その数は実に100軒以上。新婚旅行で訪れた北海道でも結局最後は牧場見学をハシゴしてしまうくらい熱心に研究と検討を重ねました。

口和に帰ってきたのが2016年。同時に、牛舎の増築と自動化に向けた計画が動き始めます。資金は、関係機関がプロジェクトチームを立ち上げサポート。冒頭の土地造成は、牧場作業の合間に自分たちだけで行いました。その一方で、資材高騰の影響を受けて、計画変更を余儀なくされることもありました。 いろんなことがありましたが、ついに2022年、こだわりが詰まった新牛舎が完成しました。
 
目玉はスウェーデンのDeLaval社製搾乳ロボットです。牛が好きなときにロボットの枠に入り搾乳、牛は美味しい餌をもらえます。搾乳の量や回数が記録されコンピューターの画面で確認できます。搾乳の回数も管理されるので、回数が多い子が来たときはロボットの扉が開きません。

また、自動化によって重労働がなくなったので、日常作業は梢ちゃんひとりでも回せるようになったそうです。

ところで、みなさんは自動化や機械化という言葉にどんなイメージをお持ちでしょうか。そこには、優しさや思いやりとは真逆な冷たさを感じてしまう方もいらっしゃると思います。ぼくもそう思っていました。

ところが、搾乳の自動化はこの予想に反して、牛たちにとても優しいものでした。これまでは搾乳や餌やりの時間は、人間の作業の都合で決められていましたが、このロボットであれば牛たちは好きな時間に搾乳してもらえるのです。実際、夜しか搾乳に来ない牛もいるそうです。

メリットは他にもあります。リアルタイムに一頭ずつのデータが確認できるのと、作業時間が減ったことで牛と向き合えるようになり、体調の小さな変化に気が付きやすくなりました。導入当初は、ロボットに慣れない牛との格闘で深夜まで牛舎にいる日々が続いたそうですが、慣れてくると牛たちの目つきが以前よりおだやかになっていったそうです。

搾乳ロボットの導入で作業は軽減され、牛たちもより幸せになったのですが、いずれは餌やりなどの自動化も計画しています。さらに、ふたりは省力化によってできた時間を活用して次の構想にも着手しています。
 
モーモーあいすらんどでは、商品をリニューアルしネット販売を開始。観光需要も見込んだ実店舗の復活もめざします。また、輸入飼料も高騰していますので、価格に左右される影響を少しでも減らすため、自家飼料を増やすことをめざしています。つまり、モーモーあいすらんどの売上増が雇用を生み出し、自家飼料の増産で地域の遊休農地の解消が進みます。

ということは、厳しい作業からの解放が目的だった機械化が、地域課題の解消にまでつながるということです。そして、この一連のことは、すべて「帰ろう」と決めた賢太くんと梢ちゃんの一歩からはじまりました。
 
賢太くんは言います。都会からすれば不便に感じることもあるけど、そんなことは慣れるしネットでなんとかなる。それよりも、実家、地元には家や土地などの資源があり、人とのつながりと支え合いがあり、応援もしてもらえる。田舎だからといってできないことはない。やってみればいいし、無ければ自分たちで作る。そんななかで、楽しい仕事をする、楽しくなるようにする。できることはある。
 
賢太くんの話にうなずきながら梢ちゃんがモニターとにらめっこし、壁に掛けられた画面には牛舎の様子が写し出され、事務所の窓の向こうでは牛たちがしずしずと搾乳ロボットに入って行きます。そこには、これまで知らなかった新しい牧場の姿がありました。

そんななかで聞くふたりのお話には、牧場だけではなく地域の未来も明るくする、そんなワクワクがたくさん詰まっていて、こちらも元気をもらいました。

お忙しいなか、ありがとうございました。

➡合同会社たなべ牧場のウェブサイト
≪モーモーあいすらんどの絶品アイスとプリンもお取り寄せできます≫

口和自治振興区
地域マネージャー
松本 晋太

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